―それは、過去は埋められないから。vol.2
最近この季節になると、イライラが募る。しかし当方は基本的に穏やかな人間なので誰かを叱ることはしないし、雄たけびを上げたり、ましてはSkypeで「ごめんね?Mさん。昨日の焼肉、すっぽかしたわけじゃないんだよ?」と誤爆されても、全然心はシーンとしているのである。
人生つまらない。それは誰もが思うこと。だからどうしたいという要求もない。それでも、だからこそ、譲れない想いがそこにあった。他者の幸せを考えるのであれば、何をしててもいい。自分のことは何も考えない。大きな事件で疲弊していた、人によっては大きな意味を持つあの頃の詳細を、再び今ここへ―。
-ある某所の洒落たバーで、こんな会話が繰り広げられていた。
青年「いい加減だからこそ、先に気がついていた。それは気がついていないことを隠す優しさでしかない」
見た目は軽い感じな今流行りのものが大好きな青年だが、この時ばかりの声色はあまり青年になじんでいなかった。疲れているのにも関わらず、それを隠し、相手の目も見つめないので、情報を読み取らせない。それでいて、一線を常に引いて他者を寄せ付けない雰囲気を醸し出す。
幸せの青い鳥がやってきても自ら切り捨てるようなこの青年の雰囲気は、昼に一緒に食べたTポイントが使えるレストランでも同じことを言っていた。
青年「2人を同時呼び出したからには、ここを覚悟の場としてほしい」
「わたしは、ここ数日不安しかなかった。でもこれから先、毎日さらに不安定な毎日があるのであれば、それは、気が付いていないことを打ち明ける勇気を誉めてほしい」
「もう既に、この世の中にたくさんの不安を抱えているんだよ。あなただけがそうじゃない」
駅から歩いて1分のお気に入りの洒落たバーに呼び出されたが、実際には呼び出した振りのパフォーマンスを披露しただけだった。
抽象的で"たくさんの不安"とは何を揶揄しているのかがわからない。
人って絶対公平じゃないから、他の人と比べてもっと早くにこうしていればよかった・・・とか、時間には勝てないつまらないことに、うじうじと凄く悩むことがある。でもそういったものを無視して、考えないようにしても毎日毎日気になってしまう人間の心理がイライラする。どうすればいいのかとぼやき、どうしようもないと自問する日々は、どうしたって体に悪い。そのような考えは過去にもあってそれが自信の中で膨れ上がってどうしようもなくなる。今まで仲間だった人が明日には敵となり敵となったと思ったらいなくなる。いなくなったらいなくなったで諸手続きが遅延し、FAXで送信できなくなった。終わりにするというのはそういうことだった。
好きな氷入りのカシスオレンジのカクテルをちびちびと飲む。完全にカシスの紫色とオレンジジュースのオレンジ色がまざっていないのは店舗ではわざとそのように商品として出しているので、お客様自身で混ぜろということ。その混ぜる行為でさえも青年はめんどくさい。
青年「じゃあどうすんの?これから先もずっとそんな感じ?」
そう、それしかない。
青年「それはどうしようもないから?」
うん。だって、頭がいい人だから微妙な発現にならないようにすごく気を使っているのが分かる。発言がうまい具合に回避している。「みんなと」「○○と」「人が違うから」・・・。
青年「それって残酷だよね」
「うん・・・でもどうすればいいのかわからない」
まぁいいんじゃないの?と心意気を汲んでくれる人の存在はありがたく、こういった人は良い奥さんになるんだろうなぁと思いながら、まぁ、あんたもがんばれ、付き合ってくれてありがとうと数分飲んだだけで、そのバーを後にした。
結局、その後に逢うことは叶わなくなった。
でも、それは僕たちの中では信頼してたからこそ自分にうそを塗り固めながらここまで、きていた。